現代でもこういうワインも存在しているって奇跡です。

今夜はいきなりステーキならぬ いきなりおまけ画像

ドゥ・クロヴァロンの2016年 I.G.P. ペイ・デロー レ・ザンディジェンヌ

一昔前では V.d.P. (ヴァン・ドゥ・ペイ) と法律上カテゴライズされていたのですが EU統合に伴い2009年からは V.D.Q.S. が A.O.C. に昇格(?)し消滅。

また150以上あった V.d.P. が約半分の数に集約された I.G.P. (アンディカスィオン・ジェオグラフィック・プロテジェ なんですがあまりに長いんで頭文字で イ・ジェ・ペー) というカテゴリーに変更されました。

 

これらのアルファベット頭文字軍団を文章で説明するのはなかなか厄介ですし 字数を要します。

なので Zoom または 直接お店で説明した方が良いかな~ ここは。

なんて Zoom しませんが。

 

それはさて置き フランスワインの法的なヒエラルキーとしては2009年以降(数年の移行期間を経て)それ以前の4階層から3階層へと変わったということです。

(頂点がA.O.C. その下に V.D.Q.S. その次が V.d.P. 一番下が V.d.T. という図式から A.O.C. 次いで I.G.P. 一番下が V.d.F. に)

 

それこそ90年代後半にフランスのワイン法を頭になんとなく叩き込んだハバネロとしては戸惑いがゼロとは言いませんが 実際は細かい部分で常に変更・改正されているので ワインスクールの情報鵜呑み型ではない というか むしろ 勝手に自分で調べる型のハバネロには大きなインパクトではありません。

もちろん 全てを把握できてはいないです。

特にボルドーの情報はほぼ無視だし…

だからって道場破り的に痛めつけに来るのはやめてくださいね。

来てくれるのは大歓迎ですが 知識勝負したってワインは美味しく飲めませんから。

 

とにかく フランスのワイン法は当たり前ですが歴史と現状を鑑みつつ常に進化しています。

未だに判例主義から抜け出させない我が国の法律と違って。

 

なので最もこの変化に対し 辛い思いをしている か または 全く進化すらしない のは 90年代半ば以前に ソムリエという資格を得た人々 かもしれませんね。

もちろん この世代でも努力して情報をアップデートしている尊敬すべき素晴らしいソムリエはいるのですが。

 

話をワイン法に戻すと ヒエラルキーの頂点にある A.O.C.ワインと違い I.G.P.ワインの規定は緩い。

その土地の産物ならではの確固たる特徴を製品が有するために厳密な基準がある A.O.C. と違って I.G.P. はまぁ自由度があるわけです。

さらにラングドックという広大なワイン産地の全域をカバーする『I.G.P. ペイ・デロー』はそれゆえ使用可能ブドウ品種が半端ないわけです。

 

調べるだけでさすがにこれは頭が痛くなります。

アルファベットのAから始まる使用可能品種を順に途中まで挙げていきます。

 

まずはアリカンテ・アンリ・ブーシェ。

これはハバネロ的には当たり前に知っている。

果肉まで赤い珍しいブドウ品種の代表。

 

次いでアルフォンス・ラヴァレ。

何ですか? これ??

全く知らない品種。

調べてみるとフランスでは基本 生食ブドウとされているようです。

画像的にも醸造用葡萄と違って粒が大きく果皮は厚くなさそう。

確かにこれなら生食向きっぽい。

醸造するとヌーヴォーのような軽いスタイルだそうです。

驚いたことにバリ島でそれなりに楽しめるワインが造られているそうですからバリ島のビーチで知らず知らず飲んだ人がいるかもですね。

 

3番目はアルテス。

えっ? アルテスってサヴォワの偉大な白ブドウでしょ。

ラングドックでありなの???

 

4番目から順に アルヴァリーニョ アラモン・ブラン アラモン・グリ アラモン・ノワール と普通に知ってるブドウが並び 次が アラネル...

これまた全く知らんよ。

なのでこれまた調べてみると‥

1961年に作られたグルナッシュ・グリとサン・ピエール・ドレの交配品種。

グルナッシュ・グリはともかくサン・ピエール・ドレ自体がまたマイナー(笑)

ジャンシス・ロビンソンの『ワイン用葡萄ガイド』には ほとんど絶滅した とある。

でもこれ 出会ってる。

だから記憶の片隅にあった。

それこそ V.D.Q.S. 時代のサン・プルサンで使用が可能だった品種。

でもサン・プルサンが A.O.C. に昇格したら使用が認められなくなった。

そりゃぁ絶滅へと向かうわ。

 

話を戻して このアラネルというブドウは白桃やオレンジの花の香りがあり また酸がクリーンで糖度が上がるとのこと。

ほとんど栽培されていないけどフローラルでアロマティックなワインとなるポテンシャルがあるらしい。

 

マジか。

だったら ニューワールドでシャルドネ植えて世界のどこにでもあるような金太郎飴ワイン造るくらいなら アラネルにトライすればいいのに。

良くも悪くも伝統という名の重しが足かせとなってチャレンジしずらいフランスとは違うんだから。

 

と 思ってしまうのですが… 

まだまだ 頭文字Aの品種は続きますし 最後はヴェルデーリョのVまで(面倒で)数えきれない数の品種が認められているし ブレンド比率の規定もない。

かなりの範囲でやりたい放題が可能。

 

これが I.G.P. ペイ・デロー の恐ろしさ。

 

そんなこともあり このワインはただただ真面目に常識的なワインだけ勉強をしている人には理解不能なワインかもしれませんね。

インポーターの資料によれば‥

葡萄が植わるのは石垣と葡萄以外の果樹で回りから遮られた1ヘクタール弱の畑。

そこには200年ほど前に植えられた15種類以上の品種が白ブドウも黒ブドウも さらには(基本的に白ワイン用のブドウだが果皮の色が薄いピンク色だったり紫色の)グリ系のブドウもが混植されているとのこと。

さらには接ぎ木されていない つまり 自根の樹も多く含まれているそうです。

 

たぶん 全てのブドウ品種がなんであるかは分からないんじゃないですかね? 生産者にも。

なんせ品種ごとに区画わけもせず大昔に混植 すなわち ごちゃ混ぜに植えられたのだから。

 

接ぎ木と品種ごとの植樹が当たり前の現代に いまだに自根で混植された畑が残っているという奇跡。

 

白ブドウやグリ系も入っているようですが 色はしっかりと深い色合い。

熟したダークチェリーのような果実味。

スパイシーな酸とその豊潤な果実味に溶け込んだタンニンがうまくヴォリューム感を引き締めています。

 

最後の1本が残っていました。

ご興味ある方 お早めに~

La Nuit Blanche

2008年6月 東京・銀座にオープンした小さなワインバーです。 新世代のカリスマ生産者のレアワインから大御所の古酒まで ワインに詳しくない方も マニアックなワイン好きな方も満足いただけるよう 自然派だからとか 自然派じゃないとか そんなことは度外視し 旨いワインかどうか 飲んで幸せになれるかどうかということを大切にしています。 旬の食材を活かしたイタリア料理(アラカル)とともに深夜まで楽しめます。

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